3月7日(土)13:30~16:00、ハワイ・コンベンション・センター3階では、『ハワイにおける今後のエコツーリズムのあり方』と題しシンポジウムが行われました。ホノルルフェスティバルは昨年第20回の節目の年を終え、次の20年を「交流文化」「教育」「環境」の3つのテーマとして新たな歴史をつくっていくことを宣言し、その「環境」のテーマから、今回は日本市場を見据えた取り組みを考えます。

シンポジウムは2部構成になっており、まず【セッションⅠ】では、日本エコツーリズム協会理事で観光庁認定『観光カリスマ』でもある山田桂一郎氏、またハワイアン・レガシー・ハードウッズ社代表で、ハワイエコツーリズム協会 2014 Eco-tour Operator of the yearを受賞したジェフェリー・ダンスター氏による、”エコツーリズムの概念”についての基調講演が行われました。
そして【セッションⅡ】は、パネルディスカッションです。

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会場には、ハワイで活躍する企業代表者をはじめ、多くのエコツーリズムに関心のある方々が集まりました。

【セッションⅠ】”エコツーリズムの概念”についての基調講演

エコツーリズムとは、自然環境の他、文化・歴史等を観光の対象としながら、その持続可能性を考慮するツーリズム(旅行、リクリエーションのあり方)のことです。
エコツーリズムは、まだ全てが新しく、若く、歴史の浅い状態です。

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今回ジェフェリー氏は、木の保全、森林の保全がエコツーリズムに結びついていけば、という視点でお話をされました。

まず、1978年~2012年にかけての興味深い世界産業指標の話として、
・25日ごとに、ハワイ島の大きさ程の森林地がなくなっている。
・熱帯広葉樹の需要は4年ごとに2倍になっている。
・現在、再植されているのは広葉樹需要のたった2%以下。
と、森林環境において危機感を感じざるを得ない状況を伝えました。
国連調査によると、2023年までに保護されていない熱帯広葉樹は全て無くなってしまうだろうと言われています。

あわせてハワイの産業指標ですが、
・コアの木は世界で最も価値のあるハワイ固有の木であり、地球上の他の場所では育たない。
・ここ10年だけでも価値は1,000倍に増加。
・コアの木の森は、たった10%しか残っていない。
という説明がなされました。

そこで、エコツーリズムを推進するために、「森の誕生」を提言しています。

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写真の男性は、手の中に森そのものを持っていると言っても良いでしょう。

現在、レガシー社は、元々カメハメハ大王(王族)の所有地(牧場)で全て雨水を使用した自然の森林再建を進めています。こちらのレガシーツリー(コアの木)は非常に成長が早く約4年で森林と呼べるような規模まで成長します。そして、ハワイの地特有の鳥や昆虫が生息し始め、独自の環境が生まれていきます。

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数値的観点で述べますと、1本のコアの木の生涯で、$31,250分の酸素を作り出し、$62,000分の大気汚染対策が出来、$37,500分の水を再生し、$31,250分の土壌侵食を管理します。
1本のレガシーの木は家族4人が1週間ハワイで休暇を過ごすのと同等の炭素を吸収してくれ、2本で家族4人が1年間必要な酸素を作り出すことが出来るのです。

ジェフェリー氏は、エコツーリズムに携わるツーリストの方たちに、ただ見て喜ぶだけではなく、その一部となって一緒にこの森を守るということに参加していただきたいと気持ちを述べました。

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続いて、和歌山大学の生徒さんによるプレゼンテーションも行われ、自らが学んできたエコツーリズムの考え方、また、今後ハワイエコツーリズムは、自然、文化、歴史を融合させることが重要だという独自の考え方を専門家達へ投げかけました。
今後の世界を担っていく頼もしい若者の姿に、関係者たちは賛美の温かい拍手を送りました。

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【セッションⅡ】パネルディスカッション:テーマ「持続的なエコツーリズムの実践事例から」

パネルディスカッションに移ると、ハワイエコツーリズム協会アドバイザー並びにハワイ大学教授のリンダ・コックス氏、クアロア牧場代表のジョン・モーガン氏、ハワイ州観光局次長のミツエ・ヴァーレイ氏、和歌山大学教授の竹林浩志氏、出口竜也氏、此松昌彦氏らパネラーが会場前方ステージに登壇し、それぞれの意見を述べました。

その中で、和歌山大学教授竹林氏は、エコツーリズムの重要性について独自の戦略論の観点から以下のように語りました。

「戦略的な観点で物事を考える時、先々のことを考えて行かねばならない。
戦略論はいわゆる”模倣(真似)”であり、いろんな場所で真似が真似を生んで突き詰めていくと、標準化する。標準化が進むと遠くに行く必要が無くなり、近場で安いところを求めるようになる。そこで客取りが競争化すると、標準が低下し自らの首を絞める形となる。

エコツーリズムは、各地域の独自性を突き詰めていくため、全然違うものが出来てくる。
非常に小さな範囲で、独占のような状態が作れる。そこでなくてはならない、という状況です。
そうすればそこにくる意味というものがしっかりと創り上げられるわけです。
それは、やはり文化とも言えますが、その地でどんな生活が行われているか、どのような生活を伝えていくかでその地域のエコツーリズムを成り立たせて行けるはずです。」

その後も、パネラーの方々から各々の専門的観点からエコツーリズムへの取り組み手段について語られました。

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最後は、山田桂一郎氏が今回のシンポジウムにおける成果として、参加頂いた方々の”シェア”が一番大事だと述べ、エコツーリズムの取り組みにおいてはハワイの波“WAVE”という言葉を用い、素晴らしいまとめをしてくれました。

W: Will (強い意思のもと)
A: Action(行動を起こし)
V: Vision(明確なビジョンを持って)
E: Enjoy(楽しむ)

本日は、この”WAVE”を是非、共有してほしいと語られました。
まさに、その通りでしょう。

エコツーリズムに関するシンポジウムは、今回限りではありません。
今後も何度も何度もシンポジウムを開催し、エコツーリズムへの賛同者、日本からの交流者が増えることを目的とし、ハワイの、しいては世界の保全に取り組んでいくのです。